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OLU House

2011年12月10日

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若い夫婦のための住宅である。


110㎡と狭いうえに、三角形が曲がったような形状の、いわゆる狭小変形敷地に建つ。加えて、高圧線の鉄塔とそれが建つ小山、毎日盛況なスーパー、交通量の多い幹線道路や大型商業施設に囲まれており、長閑な山間と海辺に囲まれながら、局所的に非常にノイジーな環境である。


一般的には、住むために適しているとは言い難い土地である。しかし施主夫婦は、この環境に住むことを肯定的に捉えており、むしろ楽しもうと考えていた。


「かっこよい家にしたい」というリクエストは、ここでポジティブに暮らす決意表明であり、この雑多でパワフルな場所に相応しい建築のあり方を提示しているように思えた。


この土地への施主の想いに応えるために、いかに周囲に対して開かれた建築を創るか、ということが主要なテーマとなった。周囲に対して閉ざし、内部にユートピアを創ることは、ここに仕方なく住んでいるような、ネガティブな佇まいと暮らしになるのではないかと思ったのだ。また、nLDKに代表される「住みやすい間取り」を優先すると、制約が大きい敷地の中ではどうしても卑屈になってしまう。


そこで、「住宅」というよりも、この土地の特性や力を顕在化させるような造形物の中に棲むという感覚を提案し、施主と共有できた。閉鎖的になることを避けながら、伸びやかに、そして住人を包みこみ安心感をもたらす空間を生むために、プレートを折り曲げながら敷地長手方向を軸としたトンネル状の空間をつくるスタディを繰り返した。


プレートは折り曲げられるたびに、トンネルを軸に大らかに繋がる大小様々な空間を生んだ。同時に外部に対しては、躍動的な造形ができていった。こうしてできた形態は、小規模ながらも周囲に対し強い存在感をもって新たな力を付与しながら、内部においてはその場所性を否定すること無く流れこんでくることを受け入れる。


一見すると住宅には見えないこの建築で、クライアント夫婦は楽しく暮らされている。


撮影:鈴木研一
photo: ken’ichi SUZUKI


建築九州賞(作品賞)二次選考プレゼンテーションの様子


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