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maimai house
若いご夫婦と3人のお子さんのための住宅である。
敷地は、市街地の中心に位置し、利便性の高さと閑静さで人気のエリアにある。しかし、敷地南側には前面道路を挟んで大きな駐車場があり、用途地域の性質上、そこにマンション等中高層建物ができる可能性がある。
さらに敷地は50坪程度と決して広くはなく、幅員3.5mの狭い前面道路に対して奥行きが9m程度と非常に浅い。道路への間口は東西に18mと広く、町屋にみられる「うなぎの寝床」を90度回転させたようなものになっている。
こういった特徴は一般的にネガティブに映るらしく、人気エリアでありながら長い間「売れない土地」として駐車場に利用されていた。
特に道路からの奥行きの無さを施主ご夫婦は気にしていたが、そこを逆に活かして建物を細長くし、道路から2.5m程度セットバックさせる配置案を提案した。
道路に面してできるこの大きな外部空地は、時に来客の駐車スペースとして、遊び場として、ファサードを見せる「ヒキ」として機能している。
内部空間に関しては、中央に中庭を挟んで、東西方向に15mもの「目抜き」をもたらす平面計画となっている。
道路に面する南側は、将来の変化が予測できないことと道路との近さから、開口部を限定し、視覚的にあえて閉じている。
光を取り入れるという点では、大きなFIXガラスを吹き抜け上部に設置し、周辺の変化によっても致命的ダメージを受けないように配慮している。
道路に面して大きな間口を持つため、ファサードのデザインには特に配慮した。予算上、住宅用既製サッシ使用を余儀なくされたが、大きさや形状、配置を内外の調停によってバランスさせ、特徴的なリズム感を生み出すように検討を重ねた。
ちなみに、偶然ではあるが二匹のカタツムリが並んでいるような様(ロゴ参照)が、マイマイハウスというネーミングの由来である。この大きなファサードが道路に面しているため、大きな建物に見えるが38坪程度のコンパクトな住宅である。
生活の中心となるLDKは、道路に近いながらも玄関からの動線を長くして、建物に奥行き感をもたらしている。中庭に面する廊下はその先を キッチンに向けており、お子さんが帰宅し、こちらに向かって来る様を眺めるのが施主奥様のお気に入りとのことであった。
「細長さ」を利用した豊かな内部空間を創りだすことができた。
限定された開口部のファサードは、閉鎖的で街並みに対して閉じた印象を与えるかもしれない。しかし、狭い道路に対してギリギリに寄せて配置され、常にカーテンを閉めている周辺住宅の建ち方に対し、18m×2.5mもの空地を道路に面して創りだすというのは一つの街への開き方ではないか。3人のお子さんと友達が道路と併せてそのスペースで楽しそうに遊ぶ様を見るにつけ、そう確信している。
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